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令和2年予備試験 再現答案① 行政法

設問1

1 本件条項に法的拘束力は認められない。理由は以下のとおりである。

2 法律による行政の原理から、国民の権利を制限し、義務を課す場合は、法律の根拠を要する。(侵害留保説)本件条項の内容は、今後、Bが廃棄物処理事業にかかる開発事業を行うことを認めないという内容のものであり、Bが開発行為をする権利を制限するものである。よって、法律の根拠を要する処分である。しかしながら、本件条項は、なんら法や条例に根拠を有するものでない。従って、本件条項で、Bの開発事業をする権利を制限することはできず、ゆえに、法的拘束力も認められない。

3 開発行為を行う者は、法29条により申請手続きを経た上、知事から許可を受ける必要がある。そして、申請とは、本来私人が有する権利を公益上の必要性から、一般的に禁止とする行為である。従って、Bは本来的に、開発行為を行う権利を有している。これは、法33条が、「開発許可をしなければならない」としていることからも明らかである。そうすると、本来、Bが有する開発行為を行う権利を、本件条項という何ら法的根拠がない協定で制限するのは、Bの権利を不当に侵害することとなり、許されない。従って、本件条項に法的拘束力は認められない。

4 以上により、本件条項は紳士的協定に過ぎず、法的拘束力は認められない。

 

設問2

1 「処分」(行政事件訴訟法(以下省略)3条2項)とは、公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によって直接国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定することが法律上認められるものであり、①公権力性②法的効果性の点から判断される。

2 公権力性

(1) A市の反論として、本件通知は、事前の協議を拒否する者であり、協議という文言から、両者は対等であり、公権力性がないと反論することが考えられる。

(2) しかしながら、開発許可を受ける為には、条例4条に基づき事前協議をする必要があり、協議とはいうものの、実質的には申請手続きの一環の手続きである。そして、A市は、協議に応じられない場合は、自由に協議を受けないことができる。そうすると、本件通知は、A市が優越的立場から発せられたものであり、公権力性は認められる。

3 法的効果性

(1) A市としては、本件通知は、事前の協議を拒絶するだけで、開発許可の申請を不許可とするものではないから、直接性がなく、法的効果が認められない、また、本件通知の内容を争うのであれば、法29条の許可申請の際、争えば足りるので、紛争の成熟性がないと反論することが考えられる。

(2)ア この点、実効的な権利救済の見地から、形式的には法律上の権利に変動がなくとも、被処分者に重大な不利益が生じる場合は、法的効果性が認められると解する。

 イ 前述のとおり、開発許可を受ける為には、条例4条に基づき事前協議をする必要があり、事前協議は開発許可手続きの一連の手続きといえる。そして、事前協議も開発許可もA市長が行う以上、事前協議が拒否されれば、例え、その後に許可申請をしても、ほぼ確実に不許可処分がなされる。そして、産業廃棄物を生業とするBにとって、処理施設が建設できないと、事業の遂行が困難となり、重大な不利益が生じる。事前協議で拒絶されれば、確実に不許可処分になるのであれば、事前協議の拒絶の段階で、Bに不服を申し立てる機会を与えても不合理でない。よって紛争の成熟性もある。
 さらに、条例4条の協議を経ずに手続きを進めたものは、条例11条により、工事の中止命令等の処分を受ける恐れがある。従って、事前協議の拒絶によって、Bは開発行為を行うことが出来なくなるという、法的地位にさらされることとなる。
 以上から、本件通知は、Bに重大な不利益を生じさせる行為といえ、法的効果性が認められる。

4 よって、処分性が認められる。

 

以上

 

  • 雑感

公法系は得意な行政法から書いた。設問1はいわゆる、現場思考の問題かと。とりあえず、侵害留保の原則から、法的根拠がないので✕とした。行政契約の論証なんて覚えてないので、これを絞り出せたのは上出来かな。そして、設問に「法の定める開発許可制度との関係を踏まえて」とあったので、法33条・原則許可だから、協定なんかで規制してはダメとした。

設問2は予想通りの処分性。これは、開発同意の処分性を否定した判例をネタに作った問題ではないだろうか。そして、ピーンと閃いたのが、判例は、許可が知事で、同意は市長と許可権者が異なっていたが、本件は両方とも市長。ここの事例の違いは絶対配点あると思う。法的効果性の反論までは順調に書けたが、当てはめがごちゃごちゃになった。再現でもあんまり綺麗に書けなかったが、本番はもっとめちゃくちゃだった。そこは反省点。

あと、周辺住民から反対さあれているという事情が問題文に熱く書かれていたが、これは当てはめるところが無かったので、書けなかった。これはどこで使えばよかったのかな。はたまた、前提条件として書く必要はなかったのか。。。。

まとめると、問題のレベルとしては例年通りぐらいの難しさか。応用もあるので少し難しい程度か。出来としては悪くないと思う。