司法試験合格を目指す公務員くんのブログ

司法試験合格を目指す現役公務員のブログです。

令和2年予備試験 再現答案⑦ 刑事実務

設問1

(1) 証拠⑤から、犯行推定時刻にAがV宅にいたことが推認できる。しかしながら、Aは、再雇用をVに依頼する為、度々クリーニング店を訪れており、同様の依頼をするため、V宅を訪れても不自然ではない。そして、これまでと同様に、再雇用を依頼しただけで、帰宅した可能性も大いにある。そうすると、AがV宅にいたという事実のみで、AがVを殺害したと結びつけるのは困難であると考えた。

(2)ア 犯行に使われた凶器を所持していた者は犯人と推認できる。

    本件ナイフはV殺害に使用された凶器である(証拠⑩)そして、本件ナイフはM県N市O町にある竹やぶから見つかったが(証拠⑪)、かかる場所は、Aからナイフの場所を告げられたCの供述に基づき発見された。そして、Cの供述は信用できる(証拠⑦)また、AがCへ犯行直後に連絡した事実は、証拠⑧からも裏付けられる。真犯人が、本件ナイフを偶然、M県N市O町にある竹やぶに捨てる可能性は限りなく低い。従って、ナイフの場所を知っていたAは凶器であるナイフを所持していたと推認できる。よって、Aを犯人と推認できる。

  イ 犯行を自ら告白した者は犯人と推認できる。

    Aは犯行推定時刻である令和2年2月1日に、Cに電話で人を刺したと告げている。AがCに嘘の犯行を話す理由は存在しない。よって、Aを犯人と推認できる。

 

設問2

(1)採るべき手段

  刑事訴訟法(以下省略)316の15条第1項6号 類型証拠の開示請求

  明らかにすべき事項(316の15条第3項)

  イ 316の15条第1項6号に該当する供述録取書等

  ロ 検察官はW2の供述によって、AがVに憤慨していた事実を証明し、もって証明予定事実であるAの殺意を立証しようとしている。他方、弁護士としては、W2以外の供述録取書によって、Aが憤慨していなかった事実を証明し、検察官側の証明力を減殺したい。また、Aの殺意を否定し、Aの行為は正当防衛であったことを証明したい。よって、イの証拠はAの防御活動に重要である。

(2)開示の重要性、必要性は上記のとおりである。他方、開示によって生じる弊害は、W1のプライバシーの侵害や、被告人であるAから危害を加えられる可能性であるが、Aは勾留されているので、供述者であるW1に危害を加える可能性は少ない。また、証拠⑥の内容は、抽象的な内容であり、これを開示してもW1のプライバシーに不利益はないので、弊害がないと判断した。

 

設問3

1 Cの供述は伝聞証拠(320Ⅰ)に当たるか。伝聞証拠の証拠能力が否定される趣旨は、供述証拠はその知覚・記憶・表現・叙述の各過程に誤りが入り込む可能性が高いため、反対尋問等によって各過程をチェックする必要があるが, 伝聞証拠は反対尋問をなしえないため、類型的に信用性が低いためである。そうすると、伝聞法則とは、要証事実との関係で供述内容の真実性が問題となる場合に限られる

2 Cの供述には、公判廷外のAの供述が含まれている。そこで、伝聞証拠にあたるか。この点、前述のとおり、V殺害の凶器となった本件ナイフが竹やぶの中から発見されたことは証拠上明らかとなっている。そうすると、Aの犯人性を推定するには、Aと犯人の結びつき、すなわち、Aが本件ナイフの場所を知っていた事実を証明する必要がある。よって、要証事実は、Aが本件ナイフの存在場所をCに伝えたという事実であり、具体的には、AがCに「刺したナイフは、~竹やぶに捨てた」と話した事実である。従って、本当にAが竹やぶの中にナイフを捨てたかどうかは問題とならないので、要証事実との関係で内容の真実性が問題とならず、伝聞証拠には当たらない。

3 よって裁判所は、証拠排除決定をする必要はない。

 

設問4

1 第1に、95条の勾留の執行停止を申し立てる。裁判所は、特段の事情がある場合は、勾留の執行を停止することができるが、肉親の葬儀への出席は特段の事情にあたるので、これが認められる可能性は高い

2 次に、保釈請求である。Aは殺人事件で起訴されているので、権利保釈(89条)の対象に張らないが、裁量保釈の対象にはなる。そして、既に公判は結審して判決を待つだけなので、証拠の隠滅等の恐れも少ない。よって、裁量保釈が認められる可能性がある。

 

以上

 

  • 雑感

 もう出ないと思われていた犯人性の問題がでてちょっとビックリ。犯人性の推定は比較的良く書けたのではないか。やはり、規範とあてはめで書けると文書がしまる。

 やってしまったのが、設問3。再現答案を作成している途中で気が付いたんだが、要証事実はAの殺意だ。Aは刺したことは争っておらず、正当防衛を主張しているので、ナイフを捨てた場所は要証事実ではない。正解は、形式的には伝聞証拠。しかし、精神状態の供述なので被伝聞だ。完全に間違えた。しかも、これは冷静になれば解けたし、合格する人は書ける。こういう、知ってたのに書けなかったのが一番悔しい( `―´)ノ