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令和2年予備試験 再現答案⑧ 民事訴訟法

設問1

1 本訴は債務不存在の確認訴訟である。債務不存在の確認訴訟は給付訴訟の裏返しであるので、請求権の存否が審判の対象となる。裁判所は、Yに損害が無く、債務は存在しないという心証を有しているので、「YのXに対する損害賠償請求権は存在しないことを確認する」と判決を下すべきである。

2 では既判力(民事訴訟法114条1項)はどのような判断について生じるか。裁判所は①Yの頭痛は本件事故によって生じたものではが無いこと②本件事故によるYの人的損害は発生していないこと③本件事故による物損について損害額の全額の支払いを受けていることから、Yの損害は全て補填されたという心証を形成しているが、いずれの判断について、既判力が及ぶか。

(1)既判力が生じる「主文に包含するもの」(114条1項)とは、判決主文に示された訴訟物である。なぜならば、当事者が攻撃防御方法を尽くした訴訟物に既判力を及ぼせば、紛争の解決として足りるし、また、審理の簡易化、迅速化にも資するからである。従って、理由中の判断には規範力は生じない。そして、訴訟物とは、明確性、実態法との調和の見地から、原告が主張する、具体的請求権をさす。(旧訴訟物理論)

(2)これを本件で見るに、①については、本件事故とYの頭痛は因果関係が無いという判断であり、これは、訴訟物である損害賠償債務が発生していないことの理由である。よって、理由中の判断なので既判力は生じない。②は、本訴でXが主張した、本件事故による損害賠償債務が存在しないという主張と一致するので既判力が認められる。③では、物損についても、既判力が生じるか。この点、物損については、Xの加入する保険会社から損害額が全額支払われており、XY間で争いは生じていない。従って、原告であるXは請求権として主張していないので、訴訟物に含まれず、よって、既判力も生じない。

設問2

1 後訴を主張することは、前訴の既判力に抵触するのではないか。

2 前述のとおり、既判力が生じる範囲は、判決主文で示された訴訟物である。そして、本件の訴訟物は、本件事故によって生じた損害賠償請求権(人的損害)の存否であるところ、後訴で主張する後遺症の損害も、本件事故によって生じた人的損害に含まれるので、既判力によって主張が排斥されるとも思える。
 しかしながら、不法行為によって生じた身体損害は類型的に後遺症が発生する可能性が多く、前訴で主張しなかったからと言って、後遺症による損害を請求できないのは被害者に酷である。従って、前訴を請求した時点で、後遺症が発生していなかった場合、前訴は損害賠償請求の一部請求であると解し、後訴には既判力は及ばないと解する。

3 Yの後遺症である、手足のしびれが生じたのは、前訴判決後である。従って、前訴の請求は損害賠償請求権の一部請求であったと解する。そして、一部請求の場合、既判力が生じるのは、当該一部に限られるので、残部には既判力は及ばない。よって、後訴の主張は、前訴の既判力に抵触せず、Yの残部請求は認められる。

 

  •  雑感

 民事系は民訴から解いたが、難しかった。特に設問1は何回も問題文を読んだが、本当に何を書けばよいのか分からなかった。そして、絞りに絞って、既判力が及ぶ範囲を展開したが、今思うと明後日の方向にいっていた。LECの模範答案を読んで気づいたが、設問1の前段は、確認の利益だね。反訴によって、不存在確認の利益が失われるのではないか、という論点は知ってし、分かれば書けたのに、気づけなかった。確かに、反訴しているので、これは書かなくて大丈夫かと思っていたのだが、案の定、重要なポイントだった。でも、問題文を3~4回は読み直しても気づけなかったから、これが自分の実力だったということ。そして、後段の問題も、今思うと、損害賠償請求権の訴訟物は物的損害も人的損害も含めて1個だわ。これは、民法の過去問でやったので分かったはずなのに、問題文で物損は解決済みというのを誘導だと勘違いし、既判力は及ばないとしてしまった。

 設問2は内容はあっているが、もう少し丁寧に書きたかった。

 まとめると、民訴は大はずしはしていないが、書くべき内容を書けていなかった。C評価を取れれば御の字かな。はー 再現答案書くのが辛くなってきた。あと2通。