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令和3年司法試験再現答案 民事訴訟法

設問1

課題1

1 引換給付判決をすることができない場合、原告の請求原因である「正当事由」が認められないので(借地借家法6条)、請求は棄却される。そして、Xの申出額と格段の相違のない範囲を超えて、増額した立退料の支払との引換給付判決(以下、後者)との対比では、後者は、既判力が生じる点で、原告に不利となり妥当でない。

2 既判力とは、確定判決の判断内容の後訴での通有力をいい、その効果として、後訴裁判所は、基準時における判断を前提として、審理しなければならない。(積極的効果)また、当事者は、前訴既判力で確定された権利関係を争うために、基準時たる事実審の口頭弁論終結時前の事由を提出できなくなる。(消極的作用)そして、既判力(民事訴訟法(以下省略)114条1項)「主文に包含するもの」とは、審判の弾力化、簡易化の点から、判決主文で示された訴訟物たる権利・法律関係の存否についてのみ生じ、判決理由中の判断には生じない。

3 請求が棄却された場合、基準時において正当事由が存在しなかったことについて既判力が生じるが、正当事由は、基準時後においても生じる事由なので、裁判所は後訴で、再度、正当事由について審理できる。よって、請求棄却の場合、再度、正当事由たる立退料を争う余地がある。

4 後者について検討するに、まず、引換給付判決に既判力が生じるかが問題となる。仮に既判力が生じなければ、後訴で争う余地が出る。
 この点、引換給付文言は強制執行開始要件(民執31)として注意的に掲げられているにとどまり、訴訟物自体ではない。しかしながら、訴訟物と密接に関連すること、紛争の蒸し返し防止の観点から、引換給付文言についても既判力が生じると解する。そうすると、後者の場合、既判力によって、立退料が確定され、後訴で争うことができなくなる。よって、不当な立退料を争えなくなるという点で、後者は請求棄却に比べ、原告に不利といえるので、妥当でない。

 

課題2

1 Xの申出額よりも少額の立退料の支払いとの引換給付判決は、Xの申し立て事由と一定していない。そこで、246条に違反するのではないか。

2 246条は処分権主義の現れであるところ、処分権主義とは当事者が訴訟の開始・終了、訴訟物の内容の特定につき自由に決定できるという建前をいう。そして、処分権主義の趣旨は、原告の意思尊重と当事者の不意打ち防止にあるので、①原告の意思に合致し、②当事者に対して不意打ちとならない場合は、処分権主義に反しない

3 (1)Ⅹとしては、「1000万円~早期解決の趣旨で若干多めに提示した~早期解決の目がなくなった以上、より少ない額が適切であると思って」いると、1000万円はⅩの許容できる上限であり、より少ない立退料が適切であると主張している。よって、1000万円より少額の立退料を支払う判決はⅩの意思に反せず、むしろXの意思に合致する。さらに、Xは究極的には土地の明け渡しを求めているので、立ち退きの目的を達成できる本件判決はⅩの意思に沿う。よって①が認められる。

  (2)では、Yに対して不意打ちとならないか。Yは、口頭弁論において、1000万円の立退料では全く不十分であると主張し、1000万円という額を基礎に争っていた。にもかかわらず、1000万円よりもさらに少額の立退料を認定してしまうと、Yは想定外の損失を被ることとなり、Yにとって不意打ちに当たる。よって、②を欠く。

4 以上から、本件判決をすることは246条に反する為、許されない。

 

設問2

1 訴訟引き受けの申し立ての趣旨は、訴紛争解決の実効性を確保する点にある。そこで、「承継した」とは、訴訟物たる権利関係の承継人に限定されず、広く、紛争の主体たる地位を承継した者を指すと解する。具体的には、新旧両請求の目的、攻撃防御方法等の共通性の点から、後訴が前訴の争いから派生したといえれば、紛争の主体たる地位を承継したといえる。

2 確かに、Zは建物の賃貸人であるので賃貸借契約の終了に基づく土地返還義務はない。しかしながら、Ⅹは本件土地の明け渡しを望んでいる以上、Yに対する請求もZに対する請求も土地を明け渡せという点で共通している。また、Yに対する請求もZに対する請求も、請求の執行方法として、「建物退去」「建物収去」とし、同一の建物について退去又は収去する点で共通している。そして、Zが退去しなければならない建物はYから賃借りし、引き継いだものである。よって、Zに対する請求は、Yの請求と共通することが多く、前訴から派生したといえる。よって、「承継した」といえるので、訴訟引き受けの申し立てが認められる。

 

設問3

課題1

1 Ⅹは、本件新主張は時期に遅れた攻撃防御方法(157条)であるとして、却下されるべきであると主張する。

2(1)「故意または重大な過失」の有無は、当事者の法律知識の程度や攻撃防御方法の種類等を考慮して判断する。
確かに、Yは本人訴訟であったので、権利金の重要性を理解できなかったとしても、強くは非難できないとも思える。しかしながら、XとYが立退料をめぐって争っている以上、父親がAに1500万円もの大金を振り込んだ事実については少なくとも裁判所に申告すべきであった。Aからも、「本件土地の更新~保管しておくように」と伝えられていたのだからなおさらである。よって、重大な過失がある。

(2)「時期に遅れて」とは、実際に提出された時点より、以前に提出すべき機会があった場合を指す。Yは、本件通帳の存在とAへの振込みの事実を把握していたのであるから、もっと以前に提出することが可能であった。よって「時期に遅れて」といえる。

(3)「訴訟の完結を遅延させることとなる」とは当該攻撃防御方法に関する審理がなければ、ただちに弁論を終結できる段階にあることをいう。本件新主張が認められた場合、1500万円が更新料の前払いに当たるか認定する必要があるので、さらに証拠調べをする必要がある。さらに、Aの証人尋問も必要となる。本件新主張は、最終期日に主張されたので、仮に本件新主張がなければただちに弁論を終結できた。よって、「訴訟の完結を遅延させることとなる」といえる。

(4)以上から、本件新主張は時期に遅れた攻撃防御方法(157条)である

2 そして、却下判決を得るのを容易にするためにXは、裁判所に対し、なぜ、本件新主張をもっと以前に提出できなかったのか釈明権を行使するよう申し立てる。(149条)

 

課題2

1 Ⅹの立場

ZはYの承継人(50条)である以上、訴訟状態帰属効が生じる。訴訟状態帰属効が生じると、承継人は、被承継人の訴訟上の地位をそのまま承継するので、Yが157条により主張できない地位も引き継ぐ。よって、Zによる本件新主張は157条により却下される。

 2 Yの立場

(1)訴訟状態帰属効が生じる趣旨は、前主の訴訟追行によって、代替的に手続き保障が充足していたことである。そこで、被承継人と承継人で争点や攻撃防御方法の位置づけが大きく異なっていた場合は、代替的に手続き保障が及んでいなかったといえ、前主の訴訟行為は承継されない。

(2)YもZも正当事由がないことを争っていたという点では共通する。しかしながら、1500万円の権利金という重要な事実について、Yは一切主張していない一方、Zは更新量の前原の性質も含む重要な事実として位置付けていた。よって、重要な攻撃防御方法である権利金について位置づけが大きく異なっていた。

(3)よって、訴訟状態帰属効は生じないので、ZはYの157条違反の効果を承継しない。そして、Zが引き受けをしたのは、最終期日前であったので、Zが本件新主張をすることは時期に遅れた攻撃防御方法とはいえないので、却下されない。

   よって、Yの主張は却下されない。

 

以上

 

[感想]

設問1は本当に難しかった。3回ぐらい読み直したが、何を書けばいいか分からず、振り絞って、既判力の効果を書いた。引換給付判決は、判例だと、既判力は及ばず、信義則に基づき主張できないとなっていたはずだが、信義則で書く自信がなかったので、現場で既判力が及ぶと結論付けた。実は、設問1はもう一つ論点を書いたが、何を書いたか完全に忘れてしまった。もしかしたら弁論主義のことを書いたのかも、書かなくていいと書いてあるにも関わらず。

設問2は論証はばっちりだったが、あてはめをうまくまとめられなかった。考えすぎた。もっとシンプルに書けたと後悔。

設問3 課題1は157の当てはめをすればいいんだよね?これは、規範を覚えていたので書き負けていないと思う。その後の、却下判決を得るのを容易にするための行為は謎。適当に釈明権の行使にした。 課題2は多分これであっていると思うけど、本番は時間が足らず尻すぼみ答案になってしまった。