司法試験合格を目指す公務員くんのブログ

司法試験合格を目指す現役公務員のブログです。

令和3年予備試験 刑法 答案構成

第1 甲の罪責

1 本件帳簿をY宅から持ち出した行為が窃盗(235)にあたるか

(1)本件帳簿は甲の所有物であるが、「他人の」といえるか。窃盗罪の保護法益がQ

 ア Ⓡ複雑化した現代社会においては、財産秩序の維持が重要→占有が保護法益。→242により他人の物に当たる

 イ Yが保管(占有)している→「他人の」といえる

(2)「財物」?

 ア Ⓡ財物とは財産的価値を有する有体物。具:その物によって給付を受けられる地位を得られる必要あり

 イ 帳簿は、売上等を記録する帳票。それをもって給付得られることはできないので、財物に当たらない

(3)不可罰

 

2 本件帳簿に火をつけた行為が建造物等以外放火罪(110Ⅱ)に当たるか

(1)ライターで火をつけ、焼損を惹起した。→「放火」した。本件帳簿は燃えたので「焼損」した。

(2)「公共の危険を生じさせた」とは、不特定多数人の生命・身体・財産に危険が生じること。漁網が燃え上がり、5人が煙に巻き込まれた。原付が延焼しそうになった。→公共危険が生じたといえる

(3)甲は故意ある。Z 上記の公共の危険の認識はなかった。そこで、公共の危険の認識が必要かQ
ア 

判例は結果的加重犯であることから不要としている

Z 自己物の放火は本来不可罰→公共の危険の認識は必要㋲公共の危険の認識認識  は、延焼の認識ではなく、一般人から見て不特定多数人の生命・身体・財産に危険が生じる恐れを認識していれば足りる

   イ 甲は防波堤が釣り人に人気があり、釣り人が立ち入ることを知らなかった。漁網、釣り人5人、原付の存在を認識していなかった。→甲は立ち入り禁止で人が入らない防波堤でドラム缶に火をつけた認識しかなく、上記のような公共の危険が発生する認識はなかった。→公共の危険の認識がなく、110Ⅱ成立しない

(4)器物損壊(261)に当たる。

 

3 乙がXを殺そうとしていたのを止めず、立ち去った行為

(1)不作為による殺人、殺人の幇助どちらに当たるか

 ア Ⓡ専ら自己の犯罪は正犯 他人の犯罪に加担したに過ぎない場合は狭義の共犯

 イ 乙が殺そうとしていたのを止めなかっただけで、甲がXを殺そうと何か積極的に行動したわけではない。→狭義の共犯

(2)不作為の幇助に当たるか

ア 幇助Ⓣ→不作為によっても犯罪を容易にすることは可能。㋲処罰範囲→①法的義務②作為の容易性、可能性必要

イ ①息子 保護義務あり(民法730)息子として介護していた、条理上、救助する必要あり。自宅には乙以外甲しかおらず、乙の犯行を止められるのは甲のみ→甲が救助される可能性は甲にかかっていた。→①〇
②乙は女性、止めようと思えば力づくで止めれた→②〇

(3)乙は甲に気づいていなかった。片面的幇助成立?

 ア 幇助Ⓣ→物理的幇助〇 心理的幇助×

 イ 不作為は物理的幇助→〇

(4)後述の通り乙は殺人、甲は嘱託殺人(202)の幇助の意思 いずれの幇助犯が成立するか

 ア 甲の幇助によって、客観的に殺人罪の幇助犯が成立。Z38Ⅱ→殺人の幇助犯は成立しない

 イ では、嘱託殺人(202)の幇助成立するか。軽い故意に対応したTBあるか。

 (ア)Ⓡ 実質的に判断。保護法益や行為態様で重なり合いがあればその範囲でTBあり

(イ)保護法益→生命 行為態様→生命を侵害する。嘱託があったか、なかったかの違い
→嘱託殺人(202)の限度で重なり合いが認められるので。嘱託殺人(202)のTBあり。→嘱託殺人(202)の幇助成立する

 

4 罪数

 

第2 乙の罪責

1 Xを殺害したこと199?

(1)80歳の高齢のXの首を絞めつける→Xの死亡結果を発生させる現実的危険性を有する行為→実行行為〇

(2)Xの殺してくれというのは本心ではない。本心でなければ、「嘱託」を受けたは言えない。

(3)乙はⅩの本心を知っていた。よって、故意の錯誤はない。そして、殺意により、上記行為をおこなった。→Xは死亡→199〇

2 罪責

 

[感想]

文量少ないので、何か論点を落としていそう。難しさとしては去年と同じぐらいかと。Y宅から段ボールを盗んだ点については、書くか迷ったが、文量的にこれを書かないと少なすぎるので本番でも書くかな。でも、帳簿は明らかに「財物」ではないので、否定でいいはず。窃盗以外に外の罪が成立するのかな。思いつかなかった。

勝負所は、放火罪の公共の危険の認識の要否と、X殺害について乙と甲の故意がずれ(錯誤)ていたところの2点だと思う。これに、気づいてそれなりに書ければ合格答案、上位答案を狙える。公共の危険の認識は判例では不要だが、問題文の事情から、必要で書かなければ点は入ってこないと思う。自分も本来は判例と同じく不要で切るが、今回は必要説に立つだろう。ただ、その場合、論証を正確に覚えているかどうか。自分もここは正確には書ける自信がない。
 故意の錯誤については、客観的には殺人の幇助→Z38Ⅱ→故意に対応した202のTBあるかという書き方を覚えていないと厳しいと思う。逆に覚えていればそれになりに書けるのでは。