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令和3年司法試験再現答案 行政法

設問1

小問(1)

1 本件不選定決定は、「処分」(行政事件訴訟法(以下省略)3Ⅱ)に当たるか。

2 「処分」とは公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、直接国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定することが法律上認められる処分をいう。具体的には、①公権力性②法的効果性③紛争の成熟性の点から判断する。

3 ア 屋台営業許可の選定は、屋台営業候補者として申請した者から(規則18条)市長が最適な者を一方的に決定する。よって、公権力性が認められる。(①)

  イ もっとも、本件不選定決定により、屋台営業候補者として選定されなくとも、直ちに、屋台営業を行えなくなるわけではない。そこで、法的効果性が認められないのではないか。
 まず、道路上で屋台営業を行うためには、道路占用許可を得る必要がある。(法32条第6号)そして、屋台営業の占有許可を申請できる者は、許可受者の親族等か、屋台営業候補者として選定された者に限られる。(条例9条第1項(2)、同25条、26条)そうすると、屋台営業候補者として選定されなければ、道路占用許可申請をすることができず、ひいては、占用許可を受けることもできなくなる。従って、本件不選定決定は、道路占用許可を適法に申請できる地位を奪うという法的効果を有するといえる。よって、屋台営業候補者の選定を受けようとする申請は、適法な道路占用許可申請権者の地位を取得すという利益を求める行為であり、(行政手続法2条第3号)不選定決定は、かかる利益を得ることを拒否する、申請拒否処分に当たる。以上から、本件不選定決定は法的効果性が認められる。(②)

  ウ 屋台営業候補者として選定されなければ、道路占用許可の適法な申請者となることができず、占用許可申請は確実に不許可となる。道路占用許可が確実に不許可となるのが分かっているにもかかわらず、道路占用許可の不許可処分までXが争えないとするのは不合理である。よって、紛争の成熟性も認められる(③)

4 本件不選定決定は「処分」に当たる。

 

小問(2)

1 本件不選定決定について、訴えの利益(9条1項括弧書き)が認められるか。

2 訴えの利益とは、処分を取り消す必要性をいい、具体的には、原告の請求が認容された

場合に、原告の具体的利益が客観的に回復可能であることである。この点、本件区画は、本件候補者決定により、Ⅽが候補者として選定されている。各区画は、申請者のうち1名しか選定されないので、仮に、本件不選定決定が取り消されたとしても、Ⅽが候補者として選定されている以上、Bが候補者に選定される余地はなく、訴えの利益が欠けるのではないか

3 複数の候補者から1名を選定する場合、選定者は候補者同士を比較しながら、最適な者を決定する。そうすると、候補者は相互に一体不可分の関係にあるといえる。Bに対する不許可処分が取り消された場合、行政庁は判決の趣旨に従い、再度Bの申請を審査することとなる(32条2項)。BとCは一体不可分の関係にある以上、Bの再審査を行う際は、Cについても併せて審査する必要があり、その結果、Ⅽではなく、Bが最適であるとして、候補者に選定される余地がある。よって、Bが本件区画の屋台営業候補者に選定される余地がある以上、訴えの利益が認められる。

 

設問2

1 本件不選定決定は、裁量の逸脱、濫用であるので違法であると主張する(30条)

2 屋台候補者の選定(条例26条1項)に裁量が認められるか。

(1)条例26条1項では、屋台営業候補者を「選定する」とある。選定とは、複数の候補者から最適な者を決定する行為であり、決定権者に裁量があることが当然の前提である。よって、条文の文言上、裁量(要件裁量)が認められる。

(2)屋台営業候補者として誰を選定するかは、候補者の営業内容、営業場所周辺との調和の有無、観光行政、道路行政上の可否等、専門技術的な判断が必要である。よって、処分の性質上も裁量が認められる。

 よって、屋台候補者の選定は裁量が認められる。

3 裁量がある行為であっても、行政庁の判断の結果及び過程について、重要な事実誤認があるか又は社会観念上著しく妥当性を欠く場合、裁量の逸脱、濫用として違法となる。(30条)

4 市長は、他人名義営業者に対しては、6か月間の暫定猶予を認めただけで、それ以上に法的保護を与えていない。そこで、従来営業を続けてきた他人名義営業者への配慮に欠け、考慮不尽とならないか。他人名義営業者に対する法的保護の必要性が問題となる。

(1)A市としては、道路占用許可は行政上の特許であり、譲渡の対象には当たらないので、他人名義営業者は無許可で営業を行っている者と変わらないこと、許可が売買の対象となったり、営業者の頻繁な交代により屋台をめぐる諸問題の解決に向けた継続的な話し合いが難しくなるなど、行政運営上、支障が生じていることなどから、法的保護の必要性はないと反論する。

(2)しかしながら、A市の市道上の屋台はA市の重要な観光資源となっているほか、街に賑わいや防犯効果をもたらしている。たとえ、適法な手続きを得ていなかっとしても、長年屋台を営み、A市の観光や賑わい創出に寄与してきた無許可営業者のこれまでの功績は評価に値するものである。

また、道路占用許可の許可基準においては、占用の対象や位置が道路管理上支障がないか否かが重視されており、誰が占有者となるかについては、重視されていない。(法32条、33条)

さらに、他人名義営業者は、屋台営業を生業として生活している者が多く、施行後の6か月間で新たな店舗や仕事を探すことは困難である。したがって、他人名義営業者の生活を保護するという見地からも、法的保護の必要性がある。

よって、他人名義営業者の地位は法的保護に値し、これを考慮していない本件不選定決定は考慮不尽がある。

5 市長は委員会の申し合わせに基づく点数を差し引いて、屋台営業候補者を選定した。そこで、委員会の申し合わせは合理的であるといえるか。仮に合理的でない場合は、市長が申し合わせの点数を差し引いたことは何ら問題でなく、裁量の逸脱、濫用にも当たらない

(1)A市としては、委員会の申し合わせは市長の公約に反すること、また、新規参入を望むものと不公平になるので、申し合わせは不合理であると反論する

(2)しかしながら、前述のとおり、長年、屋台を営業し、地域の発展に寄与してきたという実績は評価に値するものであり、条例19条(1)~(4)の取り組みの具体的な実績として評価の対象とすることは何ら問題とはいえない。また、申し合わせでは、「A市との間でトラブルのなかった」者という留保をつけているので、行政運営上の支障が継続するようなことはない。さらに、加点は25点のうち、5点だけなので、新規参入者の申請内容次第では、既存業者に逆転できる可能性も大いに残されているといえる。よって、新規参入者の利益を不当に制限する不公平な内容ともいえない。
 よって、申し合わせは不合理とはいえない。にもかかわらず、市長は、自身の公約を実現したいという一方的な理由だけで、委員会の申し合わせを無視し、選定を行ったので、評価に対する明白な合理性の欠如があるといえる。

6 以上から、本件不選定決定は社会通念上著しく妥当性を欠くので、裁量の逸脱、濫用に当たり、違法である。

7 市長が委員会の決定を覆して選定をしたこと自体が、手続きの瑕疵に当たり、違法ではないか。

(1)A市としては、委員会の推薦はあくまでも市長が選定を行う際の一判断材料に過ぎず、最終的な決定権が市長にある以上、委員会の推薦を覆しても問題はないと反論する

(2)しかしながら、条例があえて委員会に諮問することを求めたのは、公平な第三者機関を関与させることで、選定の公平性、透明性を確保し、もって市長の専断を防止する点にある。かかる趣旨に基づけば、市長は、委員会の推薦が著しく不合理であるなどの特段の事情がない限り、委員会の推薦を覆すことは許されないと解する。
 前述のとおり、委員会の申し合わせは合理的であり、その他、Bを推薦するにあたって著しく不合理な事情はない。他方、市長は、屋台営業の刷新という公約を実現したいという一方的な理由のみで、委員会の決定を覆した。よって、特段の事情はないので、市長の決定は違法である。

(3)そして、行政の安定と手続きの公平性の見地から、重大な手続き違反のみが、取消事由となる。委員会への諮問、推薦は条例で定められており、屋台営業候補者の選定の中心となる重要な手続きである。よって、かかる手続き違反は重大な違反といえ、取消事由に当たる。よって、本件不選定は違法となる。

 

以上

 

【感想】

問題文で道路占用とでてきた瞬間、心の中でガッツポーズをした。なぜならば、自分は、道路占用係にいたことがあり、道路占用を熟知しているからだ。正直、道路占用、道路法については、今回受験した受験生の中で一番詳しいという自負がある。

 とはいったものの、問題の中心は、屋台条例の話なので、自分の知識が有利になったかといえば、ほとんど関係はなかった。

設問1小問(1)は処分性の話。処分性苦手なんだよなー。試験直前に、少し話題となっていた橋本先生のブログで処分性の勉強をしてかなり役立った。これを読んでいなかったら、もっとひどい答案になっていたと思う。

小問(2)は、放送免許の判例の話。もちろんこの判例は知っていたが、これって処分性の話じゃなかったっけ?と思いながら、表裏一体というキーワードを思い出しつつ、現場でそれらしきことを書いてみた。

設問2 問題文を読んだ感想は、書くこと多すぎ!バカかよ。自分は結局解けなかったが、昨年の行政法の問題は内容が多すぎて書ききれないと聞いていたので、今回もそのパターンやな。最後まで書ききれるかが勝負だと、とにかく最後まで書き終えることを優先した。そのため、答案構成も設問2は殆どしていない。一応、最後の手続きの違法まで書いたが、最後の判例は知らなかった。これは、みんな知らないよね?ということで、規範をでっち上げて適当に書いて、ちょうどタイムアップ。感触としては、そこそこできたかなと。

あと、どうでもよいが、道路占用を道路「占有」と間違えて書いている人が絶対いると思う。自分も最初の方、全部「占有」にしていて途中で気が付いた。道路占用係で良かった。