司法試験合格を目指す公務員くんのブログ

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令和2年予備試験 再現答案⑨ 商法

設問1

1 Bについて

(1)損害賠償責任の有無

 「取締役」であるBは甲社に対して、任務懈怠による損害賠償責任を負うか(会社法(以下省略)423条1項)同条の要件は①任務懈怠②故意・過失③損害の発生④因果関係である。

ア 任務懈怠

 Bは乙社と本件買取りを行っているが、利益相反取引に当たらないか(356条1項2号)
「ために」意義が問題となるも、取締役と会社が直接当事者とならない取引は、間接取引によって規律される(356条1項3号)よって、2号の取引とは、会社と取締役が直接の当事者となる取引に適用されると解し、「ために」とは、取締役が自己または第三者の名義で行った取引を指す。そして、Bは自己の名義で取引をしているので、自己のために取引をしたといえる。そして、Bは乙者の株主総会で承認を受けていないので、356条1項2号に違反するという任務懈怠が存在する。なお、Bは乙社の唯一の株主である甲の取締役であるAから了承を貰っている。この点、総株主の同意があれば、総会での承認は不要であるが、あくまでもAから口頭で了解を貰ったにすぎず、甲社から正式に同意を得たといえない。よって、かかる事実によって結論は覆らない。

イ かかる任務懈怠について、Bは少なくとも「過失」があり、これに「よって」乙社は、市場価格の倍で本件ワインを購入するという損害を被った。任務懈怠責任が認められる。

(2)責任追及の方法

ア 追及の方法について、まず、Bは甲社の取締役ではないので、Cは株主代表訴訟を提起することはできない。(847条1項)もっとも、乙社は甲社の完全子会社であるので、847の3条を提起できないか。

イ Ⅽは甲社の株300株を有するので、「6か月前~100分の1以上の議決権を有する株主」である。(同条1項)甲は乙社の完全親会社である。(同条2項1号)そして、親会社である甲社の総資産額は1億円であり、乙社の株式の帳簿価格は3000万円であるので、5分の1を超えている。従って、「特定責任」に当たる。(同条4項)

 よって、Ⅽは847の3条により、責任追及できる。

2 Aについて

(1)損害賠償責任の有無

 Aは甲社の「取締役」である。そして、乙社は、甲社の完全子会社であり、乙社の利益は甲社の利益に直結している。そうすると、甲社の取締役であるAは、子会社である乙社の利益が最大限になるように行動する必要がある。Aは、「改装祝いも兼ねている」とし、Bが本件買取することを認めた。いくら自身の息子といえども、乙社が市場価格の2倍ものワインを購入することは、乙社の利益を著しく害する。よって、Aが本件買取りを認めたことは、経営判断として著しく合理性を欠く行為であり、善管注意義務違反に当たる。(330条、民法644条)よって、善管注意義務違反という任務懈怠が認められる。

 かかる任務懈怠について、Aは少なくとも「過失」があり、これに「よって」、乙社は150万円もの不要な費用を支出することとなり損害が発生し、かかる損害によって、親会社である甲社も間接的に損害を被った。よって、損害賠償責任が認められる。

(2)責任追及の方法

 Aは、甲社の取締役であるので、Cは、株主代表訴訟によって、Aの責任を追及することができる。

設問2

1 甲社の手続き

 甲社は、Cが有する自社の株主を購入するので、自己株式取得の手続きが必要となる。(156条、160条)よって、株式の数量や価格について、株主総会の決議が必要となり、併せて、株主に対する通知等も行う必要がある(158条)また、株式を取得す対価として交付する金銭等を、「丙社株式」とし、Cに丙社の株式を交付することができる。

2 丙者の手続き

 株主を甲社からCに変更する、株主名簿書き換えの手続きが必要となる。

 

以上

 

  • 雑感

 商法も難しかった。設問1のBへの責任追及の方法だが、これは、辰巳の答練で同じ問題を解いたことがあるので847の3を書けた。これ以外にも、ちょくちょく、答練で解いたので分かった問題があった。答練の復習頑張っといて良かった。

 ただ、設問1のAの責任は何を書いたか殆ど覚えっていない。答案構成も残っていなかったので、再現答案は信用出来ません。あと、設問2。これは、自己株式の買い取り(156)であることは気づいたんだが、最初からCと甲社の手続きと勘違いし、実際の答案はボロボロ。実質途中答案になってしまった。これは、ダメダメの答案。

令和2年予備試験 再現答案⑧ 民事訴訟法

設問1

1 本訴は債務不存在の確認訴訟である。債務不存在の確認訴訟は給付訴訟の裏返しであるので、請求権の存否が審判の対象となる。裁判所は、Yに損害が無く、債務は存在しないという心証を有しているので、「YのXに対する損害賠償請求権は存在しないことを確認する」と判決を下すべきである。

2 では既判力(民事訴訟法114条1項)はどのような判断について生じるか。裁判所は①Yの頭痛は本件事故によって生じたものではが無いこと②本件事故によるYの人的損害は発生していないこと③本件事故による物損について損害額の全額の支払いを受けていることから、Yの損害は全て補填されたという心証を形成しているが、いずれの判断について、既判力が及ぶか。

(1)既判力が生じる「主文に包含するもの」(114条1項)とは、判決主文に示された訴訟物である。なぜならば、当事者が攻撃防御方法を尽くした訴訟物に既判力を及ぼせば、紛争の解決として足りるし、また、審理の簡易化、迅速化にも資するからである。従って、理由中の判断には規範力は生じない。そして、訴訟物とは、明確性、実態法との調和の見地から、原告が主張する、具体的請求権をさす。(旧訴訟物理論)

(2)これを本件で見るに、①については、本件事故とYの頭痛は因果関係が無いという判断であり、これは、訴訟物である損害賠償債務が発生していないことの理由である。よって、理由中の判断なので既判力は生じない。②は、本訴でXが主張した、本件事故による損害賠償債務が存在しないという主張と一致するので既判力が認められる。③では、物損についても、既判力が生じるか。この点、物損については、Xの加入する保険会社から損害額が全額支払われており、XY間で争いは生じていない。従って、原告であるXは請求権として主張していないので、訴訟物に含まれず、よって、既判力も生じない。

設問2

1 後訴を主張することは、前訴の既判力に抵触するのではないか。

2 前述のとおり、既判力が生じる範囲は、判決主文で示された訴訟物である。そして、本件の訴訟物は、本件事故によって生じた損害賠償請求権(人的損害)の存否であるところ、後訴で主張する後遺症の損害も、本件事故によって生じた人的損害に含まれるので、既判力によって主張が排斥されるとも思える。
 しかしながら、不法行為によって生じた身体損害は類型的に後遺症が発生する可能性が多く、前訴で主張しなかったからと言って、後遺症による損害を請求できないのは被害者に酷である。従って、前訴を請求した時点で、後遺症が発生していなかった場合、前訴は損害賠償請求の一部請求であると解し、後訴には既判力は及ばないと解する。

3 Yの後遺症である、手足のしびれが生じたのは、前訴判決後である。従って、前訴の請求は損害賠償請求権の一部請求であったと解する。そして、一部請求の場合、既判力が生じるのは、当該一部に限られるので、残部には既判力は及ばない。よって、後訴の主張は、前訴の既判力に抵触せず、Yの残部請求は認められる。

 

  •  雑感

 民事系は民訴から解いたが、難しかった。特に設問1は何回も問題文を読んだが、本当に何を書けばよいのか分からなかった。そして、絞りに絞って、既判力が及ぶ範囲を展開したが、今思うと明後日の方向にいっていた。LECの模範答案を読んで気づいたが、設問1の前段は、確認の利益だね。反訴によって、不存在確認の利益が失われるのではないか、という論点は知ってし、分かれば書けたのに、気づけなかった。確かに、反訴しているので、これは書かなくて大丈夫かと思っていたのだが、案の定、重要なポイントだった。でも、問題文を3~4回は読み直しても気づけなかったから、これが自分の実力だったということ。そして、後段の問題も、今思うと、損害賠償請求権の訴訟物は物的損害も人的損害も含めて1個だわ。これは、民法の過去問でやったので分かったはずなのに、問題文で物損は解決済みというのを誘導だと勘違いし、既判力は及ばないとしてしまった。

 設問2は内容はあっているが、もう少し丁寧に書きたかった。

 まとめると、民訴は大はずしはしていないが、書くべき内容を書けていなかった。C評価を取れれば御の字かな。はー 再現答案書くのが辛くなってきた。あと2通。

 

令和2年予備試験 再現答案⑦ 刑事実務

設問1

(1) 証拠⑤から、犯行推定時刻にAがV宅にいたことが推認できる。しかしながら、Aは、再雇用をVに依頼する為、度々クリーニング店を訪れており、同様の依頼をするため、V宅を訪れても不自然ではない。そして、これまでと同様に、再雇用を依頼しただけで、帰宅した可能性も大いにある。そうすると、AがV宅にいたという事実のみで、AがVを殺害したと結びつけるのは困難であると考えた。

(2)ア 犯行に使われた凶器を所持していた者は犯人と推認できる。

    本件ナイフはV殺害に使用された凶器である(証拠⑩)そして、本件ナイフはM県N市O町にある竹やぶから見つかったが(証拠⑪)、かかる場所は、Aからナイフの場所を告げられたCの供述に基づき発見された。そして、Cの供述は信用できる(証拠⑦)また、AがCへ犯行直後に連絡した事実は、証拠⑧からも裏付けられる。真犯人が、本件ナイフを偶然、M県N市O町にある竹やぶに捨てる可能性は限りなく低い。従って、ナイフの場所を知っていたAは凶器であるナイフを所持していたと推認できる。よって、Aを犯人と推認できる。

  イ 犯行を自ら告白した者は犯人と推認できる。

    Aは犯行推定時刻である令和2年2月1日に、Cに電話で人を刺したと告げている。AがCに嘘の犯行を話す理由は存在しない。よって、Aを犯人と推認できる。

 

設問2

(1)採るべき手段

  刑事訴訟法(以下省略)316の15条第1項6号 類型証拠の開示請求

  明らかにすべき事項(316の15条第3項)

  イ 316の15条第1項6号に該当する供述録取書等

  ロ 検察官はW2の供述によって、AがVに憤慨していた事実を証明し、もって証明予定事実であるAの殺意を立証しようとしている。他方、弁護士としては、W2以外の供述録取書によって、Aが憤慨していなかった事実を証明し、検察官側の証明力を減殺したい。また、Aの殺意を否定し、Aの行為は正当防衛であったことを証明したい。よって、イの証拠はAの防御活動に重要である。

(2)開示の重要性、必要性は上記のとおりである。他方、開示によって生じる弊害は、W1のプライバシーの侵害や、被告人であるAから危害を加えられる可能性であるが、Aは勾留されているので、供述者であるW1に危害を加える可能性は少ない。また、証拠⑥の内容は、抽象的な内容であり、これを開示してもW1のプライバシーに不利益はないので、弊害がないと判断した。

 

設問3

1 Cの供述は伝聞証拠(320Ⅰ)に当たるか。伝聞証拠の証拠能力が否定される趣旨は、供述証拠はその知覚・記憶・表現・叙述の各過程に誤りが入り込む可能性が高いため、反対尋問等によって各過程をチェックする必要があるが, 伝聞証拠は反対尋問をなしえないため、類型的に信用性が低いためである。そうすると、伝聞法則とは、要証事実との関係で供述内容の真実性が問題となる場合に限られる

2 Cの供述には、公判廷外のAの供述が含まれている。そこで、伝聞証拠にあたるか。この点、前述のとおり、V殺害の凶器となった本件ナイフが竹やぶの中から発見されたことは証拠上明らかとなっている。そうすると、Aの犯人性を推定するには、Aと犯人の結びつき、すなわち、Aが本件ナイフの場所を知っていた事実を証明する必要がある。よって、要証事実は、Aが本件ナイフの存在場所をCに伝えたという事実であり、具体的には、AがCに「刺したナイフは、~竹やぶに捨てた」と話した事実である。従って、本当にAが竹やぶの中にナイフを捨てたかどうかは問題とならないので、要証事実との関係で内容の真実性が問題とならず、伝聞証拠には当たらない。

3 よって裁判所は、証拠排除決定をする必要はない。

 

設問4

1 第1に、95条の勾留の執行停止を申し立てる。裁判所は、特段の事情がある場合は、勾留の執行を停止することができるが、肉親の葬儀への出席は特段の事情にあたるので、これが認められる可能性は高い

2 次に、保釈請求である。Aは殺人事件で起訴されているので、権利保釈(89条)の対象に張らないが、裁量保釈の対象にはなる。そして、既に公判は結審して判決を待つだけなので、証拠の隠滅等の恐れも少ない。よって、裁量保釈が認められる可能性がある。

 

以上

 

  • 雑感

 もう出ないと思われていた犯人性の問題がでてちょっとビックリ。犯人性の推定は比較的良く書けたのではないか。やはり、規範とあてはめで書けると文書がしまる。

 やってしまったのが、設問3。再現答案を作成している途中で気が付いたんだが、要証事実はAの殺意だ。Aは刺したことは争っておらず、正当防衛を主張しているので、ナイフを捨てた場所は要証事実ではない。正解は、形式的には伝聞証拠。しかし、精神状態の供述なので被伝聞だ。完全に間違えた。しかも、これは冷静になれば解けたし、合格する人は書ける。こういう、知ってたのに書けなかったのが一番悔しい( `―´)ノ

令和2年予備試験 再現答案⑥ 民事実務 

設問1

(1)所有権に基づく妨害排除請求権としての抵当権設定登記抹消登記請求権

(2)被告は、甲土地について、別紙登記目録記載の抵当権設定登記の抹消登記手続きをせよ

(3)仮執行(民執行法23条)をすると、不動産について処分が禁止され、Cへの所有権移転登記が困難となる為、仮執行宣言の申立てを行わなかった。

(4)①令和2年5月1日、Xに対して、甲土地を売却することを合意した。

  ②本件抵当権設定登記が存在する

 

設問2

(1)抗弁として主張すべきでない。抗弁とは、①請求原因事実と両立し、②請求原因から生じる法律効果を妨げる事実で③被告が証明責任を負っている事実をいう。Bの主張は登記保持権原の抗弁に当たるが、抵当権設定を主張する為には、前提として、抵当権設定設定権者(B)の所有権を主張する必要がある。他方、請求原因では、Xは甲土地の所有権を主張しており、(設問1(4)(あ)(い))、かかる主張は、Yの主張である、甲土地がB所有という事実と矛盾する。よって、①請求原因事実と両立しないので、抗弁に当たらない。

(2)(ⅰ)①甲土地に、B名義の所有権移転登記が存在した。②Bが所有者でないということを知らなかった。

  (ⅱ)抵当権の設定を主張する者は、抵当権が担保している、被担保債権の存在を主張する必要がある。(付従性)(あ)は、YからBへの貸金債権の存在を主張するものであり、本件抵当権設定契約の被担保債権である。よって、(あ)の事実を主張した。

 

設問3

(1) Bは令和4年12月1日に貸金の一部である100万円を弁済している。債務の一部を弁済することは、自らの債務を認識していることを示すものであり、民法(以下省略)153条の承認にあたる。よって、時効が更新されるので、抗弁に当たる。

(2) Qが主張しようとした事実は、令和7年12月25日の弁済である。しかしながら令和7年12月25日は、既に時効が完成する令和7年12月1日を過ぎている。時効完成後に弁済をした者は、信義則上、時効の完成を主張できないが、かかる主張は、消滅時効の再抗弁を復活させる効果はないので、再々抗弁には当たらない。よって、主張自体失当と判断した。

 

設問4

1 Bは所有権移転登記の名義が自己にあることを理由に、所有権を主張している。しかしながら、我が国においては、登記に公信力がないので、登記の名義人が必ずしも所有者であるとは限らない。そして、本件においては、甲土地の付近に住み、料亭を営み地元でも顔が広いBを所有名義人とした方が、銀行から融資が下りやすいという事情があったため、名義人をBにした。そして、親族間では、このように、登記の名義人を便宜的に他人に移すことはよくあることである。登記名義人がBであっても、甲土地がB所有であるとはいえない。

2 争いのない証拠として、本件預金通帳が存在し、令和2年5月20日にA充てに500万円が振り込まれた旨の記載がある。そして、令和2年5月20日は、XA間の売買契約の支払日であり、500万円という額も、本件売買契約の購入額と一致している。本件売買契約以外でXがAに対して、500万円を払い込む事情はない。よって、かかる事実からXがAから甲土地を購入したことが推認できる。

3 争いのない証拠として、本件領収書がある。領収書というのは、支払いの証拠として、支払いをした者に交付される。そうすると、Xが領収書を持っているということは、Xが、固定資産税を支払ったと推認できる。そして、固定資産税は、地方税法により、土地の所有者が支払いの義務を負っている。従って、固定資産税を支払ったXは、所有者であると推認できる。

4 以上の事実により、XはAから甲土地を買ったという事実が認められる。

 

以上

 

  • 雑感

  全ての科目のなかで、民事実務が一番自信ある。設問1(3)は全く分からなかったので、適当に書いたが、これは他の受験生もかけないと思う。むしろ、本番では、この問題に時間をとられないよう、3分だけ考え、わからなかったら捨てるという戦略をとった。結果的に現場では思いつかないというか、見つけられない問題だったので、早々に次の問題に移れたのはよかったかな。

そして、一番悩んだのが、設問3の(3) これであってるのかな?死ぬほど考えて閃いたんだけど、日付の記載からして、これが正解筋難ではないかと思う。

あとは、設問4だけど、最後の設問は答練で類似問題をさんざんやったので、得意。自分でもよく書けたと思う。

これはAいっててほしい。というかこれでA取れなかったら、予備試験の解答どんだけレベル高いんだよという話になる。

 

 

令和2年予備試験 再現答案⑤ 一般教養

設問1

 クレオンは、ポリュテネイケスの亡骸を埋葬することを禁止したにも関わらず、アンティゴネが、これを破ったことについて非難した。一方、アンティゴネは、王の定めた掟は、絶対ではなく、自分は神々の掟に従ったまでなので、自身の行為を後悔していない。同じ母をもった兄の亡骸を野ざらしにしておくのは、神々の掟に反するので、自分は兄を埋葬したと主張する。

 クレオンは、アンティゴネが罪を破ったことを誇っており、傲慢であると主張している。他方、アンティゴネは、自身の行為を誇っておらず、また、誇ってはいないが、恥ずべき行為をしたとも思っていないと主張している。そして、他の人も自分の行為を理解して暮れているはずであり、それを口に出せないのは、王であるクレオンを恐れているからだと、主張する。

 

設問2

 この論争における対立軸の一つとして、法、ルールを絶対視して、盲目にそれに従う立場と、法の内容に懐疑的になる立場の対立がある。具体例として、安楽死の是非である。前者の立場からすると、安楽死は、特別の例外を除いて、法で禁止されているので、安楽死をさせることは許されないと主張する。この立場の根拠は、生命の尊厳である。

 他方、後者の立場からすると、安楽死は本人の苦痛や家族の苦しみを取り除く、有効な手段であり、また、自分がどう生きるかという自己決定権を尊重するので、むしろ生命の尊厳を保っていると主張し、安楽死を積極的に認めるべきと主張する。諸外国では、安楽死が認められている例も多く、後者の立場を補強するものである。

 

 

  • 雑感

 正直、教養論文が一番出来が悪かった。設問1なんて、なにを要約すればよいか分からず、というか何を言いたいのか分からず、問題文を5回ぐらい読んだ。設問2も、対立軸ってなんやねんというのが正直な感想。答案構成に30分かけてしまい、論述もかなりめちゃくちゃになってしまった。その上、何を書いたか殆ど覚えていない。

 

 

令和2年予備試験 再現答案④ 刑法

1 自身が暴力団員であることを隠して、賃貸借契約を締結した行為が、詐欺罪(刑法(以下省略)246条2項)に当たるか。

(1)「欺く」とは交付の基礎となる重大な事項について偽るということをいう。

ア 重大性
本件居宅がある某県では、暴力団排除の観点から、不動産賃貸借契約において、本件条項のような、暴力団でないことを確認する旨の記載を設けることが推奨されていた。また、暴力団等居住していると、他の住民が恐怖を感じ、新規入居者も減少することから、不動産の資産価値が減少する為、本件条項を設けることは、一般的である。よって、賃借人が暴力団であるか否かは賃貸借契約において重要である。

イ 偽る
確かに、甲は自身が暴力団ではないと、積極的に話したわけではない。しかしながら、X組組員であることは告げず、暴力団員でないことを隠すため、変更前の氏名名乗った。また、使用目的については、A宅を監視する為という本来の目的は隠し、人材派遣業の事務所で使用すると嘘を話した。さらに、本件条項が記載された契約書に署名した。以上から、甲は黙示的に自己が暴力団員でないということを表示しているといえ、挙動による欺罔行為に当たり、欺罔行為と認定できる。

(2)甲は賃貸借契約により、賃借権を得たので、「財産上不法の利益を得た」といえる。

(3)詐欺罪も財産犯である以上、財産的損害が必要である。この点、甲は家賃等必要な費用を払う意思も資力もあったので、Bに財産的損害が発生していないのではないか。

ア 財産的損害とは、被欺罔者の経済的目的が達成できなかった場合を指す

イ 前述のとおり、Bは暴力団員でないものと賃貸借契約をすることを目的としているので、かかる目的が達成できていない点で、財産的損害が認められる。また、不動産の資産価値が下がるというリスクがある点で、財産的損害が認められる。

以上により、詐欺罪が成立する。

2 賃貸借契約書に変更前の氏名を記入したことが有印私文書偽造罪(159条)に当たるか。

(1)甲は本件居宅を借りるという目的を有していた。よって、「行使の目的で」といえる。また、認め印を押しているので「有印」である。そして、賃貸借契約書は「権利、義務~に関する文書」である。

(2)では、偽造したといえるか

ア 「偽造」とは、文書の名義人の作成者の同一性を偽ることをいう。そして、名義とは本名でなくとも通有性があれば足りる。なぜならば、同条の保護法益は文書に対する公共の信頼であるからである。

イ 甲は氏名を変更しているが、人材派遣業や日常生活においては変更前の氏名を用いており、変更前の氏名も通有性がある。従って、名義人、作成者いずれも甲の為、人格の同一性はあるとも思える。
 しかしながら、前述のとおり、本件賃貸借契約においては、賃借人が暴力団員でないということが契約の重要な要素となっており、文書の性質上、「暴力団ではない」ということが名義人の書かれざる要件となっている。そして、名義人は、「暴力団員でない」甲である。他方、作成者は、「暴力団員である」甲であり、人格の同一性に齟齬がある。よって、偽造したといえ、私文書偽造罪が成立する。

3 甲はかかる偽造文書を賃貸借契約書としてBに渡したので、「行使した」といえる。よって、偽造文書等行使罪(160条)が成立する。

4 丙を殴り、死亡させた行為が傷害致死罪(205条)に当たるか。

(1)甲は、拳で丙の顔面を殴り、急性硬膜下血腫という生理的障害を負わせ、これに「よって」死亡に至らしめた。よって、傷害致死罪の構成要件には妥当する。そして、甲は丙に襲われたと思い、自身の身を守る為、上記暴行を行ったが、実際には丙は乙に連絡しようとしていただけであり、「急迫不正」の存在は無かったので、正当防衛(36条1項)は成立しない。

(2)もっとも、甲は、丙に襲われたと、勘違いをしていた。すなわち、急迫不正の侵害が無いにも関わらず、あると誤信していた。そこで、責任故意が阻却されるのではないか。いわゆる、誤想防衛が問題となる。

ア 故意とは、規範に直面し反対動機の形成が可能であったにも関わらず、あえて犯罪行為に及んだことに対する強い道義的非難をいう。そして、違法性阻却事由を誤信している場合は、規範に直面し反対動機を形成できないので、故意が阻却される。

イ 甲は、いきなり現れ、自身よりも体格がいい丙が胸ポケットから物を取り出したのを見た。暴力団員風の男が、胸ポケットから物を取り出した場合、武器で自身を襲ってくると誤信するのは止むを得ない。そして、スタンガンで襲われると誤信したのに対し、拳で一回殴るのは、手段として相当である。よって、甲は急迫不正という違法性阻却事由を誤信していたので、故意が阻却される。
 なお、甲は、丙の態度を注視していれば、丙が自身に攻撃を加える意思がないことを容易に認識することが出来た。しかしながら、違法性阻却事由を誤信していたか否かは、あくまでも甲の内心の問題であり、甲の主観として、違法性阻却事由を誤信していたのであれば、例え、そのように認識することが可能であっても、結論は覆らない。

     よって、傷害致死罪は成立せず、過失致死罪(211条)が成立するにとどまる。

5 罪数

①詐欺罪②私文書偽造罪③偽造文書等行使罪④過失致死罪が成立し、②と③は牽連犯(54条)となり、他の罪と併合罪(45条)となる。

 

以上

 

  • 雑感

問題のレベルとしては普通ぐらいか。一番難しいところとしては、甲が変更前の氏名で契約書を作成したことが、「偽造」にあたるかどうかというところかな。これは論点を知っていたので書けた。刑訴の一事不再理効の論点もそうだけと、やはり、論点を知っていれば、気付くし、書ける。そして、論証に悩まなければ、その分、当てはめに時間をさける。そう思うと論証の勉強はめちゃくちゃ重要なんだよな。

  反省点としては、甲の足蹴りを完全に抜かしてしまったこと。これは気づいていたんだが、もう時間がなかったので、書かなかった。やはり、刑法は書かなければならないことがたくさんで大変。

 

令和2年予備試験 再現答案③ 刑事訴訟法

設問前段

1 下線②の起訴事実(以下②事件)は、下線①の起訴事実(以下①事件)と同一の罪であり、既に確定判決を得ていることから、裁判所は、免訴の言い渡しをすべきではないか。(刑事訴訟法(以下省略)337条1項1号、憲法39条後段)①事件と②事件の罪が同一の罪に当たるかが問題となる。

2 337条1項1号の趣旨は一事不再理効にある。すなわち、被告人が一度有罪の危険にさらされた以上、再度同じ危険にさらすのは妥当でないという考えに基づく。そして、一事不再理効は公訴事実の同一性の範囲で生じる。なぜならば、被告人は訴因変更が可能な公訴事実の同一性の範囲内(312条1項1号)で有罪の危険にさらされていたからである。

3 では、①事件と②事件は公訴事実の同一性の範囲内か。

(1) 訴訟の一回的解決の要請と、被告人の防御の利益の保護の調和の見地から、両訴因が単一、または、基本的事実関係が同一である場合(狭義の同一性がある場合)に、「公訴事実の同一性」が認められる。

(2)狭義の同一性

両訴因は、被害者及び犯行の日付が異なるので、非両立の関係にはない。よって、基本的事実関係が同一であるとは言えないので、狭義の同一性は認められない。

(3)単一性

では、両訴因は単一であるか。単一性の有無は実体法上の罪数論を基準に判断すべきである。なぜならば、刑事訴訟は、刑罰権の実現を目的としているからである。
 そうすると、①事件と②事件が包括一罪に当たる場合は、単一性が認められ、公訴事実の同一性が認められることになる。そして、法が訴因制度(256条3項)を採用していることから、両訴因の単一性は、訴状に記載されている訴因を比較、検討して判断するべきである。
 ①事件は、「被告人は~乙に対し~暴行を加え」とあり、他方、②事件は「被告人は~丙に対し、暴行を加え」とある。そうすると、両訴因から、常習傷害罪の構成要件である、「常習性」の発露を見い出すことは出来ない。よって、①事件と②事件は単一性も認められないので、公訴事実の同一性の範囲内にあるとは言えない。

4 よって、裁判所は免訴の言い渡しをする必要はない。

 

設問後段

1 上記の基準により、①事件と②事件の単一性が認められるか検討する。

2 設問前段と異なり、①事件の訴因には、「被告人は、常習として、~」と常習傷害罪の構成要件である、「常習性」を窺わせる訴因が記載されている。そして、包括一罪に当たるか否かは事件の時間的場所的接着性、行為の態様から判断する。
 両事件は、いずれもH県I市内で行われた。そして、犯行の日付は令和元年5月15日と6月1日と、1か月以内に行われた犯行である。また、いずれも、甲が、相手の顔面等を殴り、障害を負わせるという点で、行為態様も共通している。以上から、両事件は包括一罪であると解せるので、単一性が認められる。
 なお、②事件は①事件の起訴、公判が行われる前に発生していたので、これを同一の罪としても、捜査機関にとって酷ではない。
 よって、両訴因は公訴事実の同一性の範囲内にあるので、裁判所は、判決で免訴の言い渡しをするべきである。

 

以上

 

  • 雑感

 今年の予備試験の一番の爆弾は刑訴なのではないか。本来、得点源の刑訴で、マイナー論点(?)の一事不再理効が出るとは思わなかった。でも、自分はこの論点は書けた。問題文で常習罪と書かれているのを見た瞬間、一事不再理効の論証を必死に思い出し、なんとか二重の危険→公訴事実の同一性の範囲内という流れを書いた。

ミスとしては、包括一罪のあてはめで、両事件の犯行場所をH県I市内としてしまったこと。(というか、この当てはめいるのか?あまり、書くことが無かったのでとりあえず、現場で思い付きで書いてみた)。あと、最後に付け足しで、②事件は①事件の公判前に行われたので、問題ないと、書いたが、ここは、一事不再理効の時的限界の論点だった。この論証は覚えていなかったのでしょうがないが、結論としては起訴できないので、少しは点をもらえると嬉しい。

出来としては、上出来。自分は前の方の席にいたので、試験委員が枚数確認をする際、他の受験生の答案の分量が見れたのだが、半分から3分の2は裏面は白紙だった。ということは、みんな書けていない。