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令和2年予備試験 再現答案③ 刑事訴訟法

設問前段

1 下線②の起訴事実(以下②事件)は、下線①の起訴事実(以下①事件)と同一の罪であり、既に確定判決を得ていることから、裁判所は、免訴の言い渡しをすべきではないか。(刑事訴訟法(以下省略)337条1項1号、憲法39条後段)①事件と②事件の罪が同一の罪に当たるかが問題となる。

2 337条1項1号の趣旨は一事不再理効にある。すなわち、被告人が一度有罪の危険にさらされた以上、再度同じ危険にさらすのは妥当でないという考えに基づく。そして、一事不再理効は公訴事実の同一性の範囲で生じる。なぜならば、被告人は訴因変更が可能な公訴事実の同一性の範囲内(312条1項1号)で有罪の危険にさらされていたからである。

3 では、①事件と②事件は公訴事実の同一性の範囲内か。

(1) 訴訟の一回的解決の要請と、被告人の防御の利益の保護の調和の見地から、両訴因が単一、または、基本的事実関係が同一である場合(狭義の同一性がある場合)に、「公訴事実の同一性」が認められる。

(2)狭義の同一性

両訴因は、被害者及び犯行の日付が異なるので、非両立の関係にはない。よって、基本的事実関係が同一であるとは言えないので、狭義の同一性は認められない。

(3)単一性

では、両訴因は単一であるか。単一性の有無は実体法上の罪数論を基準に判断すべきである。なぜならば、刑事訴訟は、刑罰権の実現を目的としているからである。
 そうすると、①事件と②事件が包括一罪に当たる場合は、単一性が認められ、公訴事実の同一性が認められることになる。そして、法が訴因制度(256条3項)を採用していることから、両訴因の単一性は、訴状に記載されている訴因を比較、検討して判断するべきである。
 ①事件は、「被告人は~乙に対し~暴行を加え」とあり、他方、②事件は「被告人は~丙に対し、暴行を加え」とある。そうすると、両訴因から、常習傷害罪の構成要件である、「常習性」の発露を見い出すことは出来ない。よって、①事件と②事件は単一性も認められないので、公訴事実の同一性の範囲内にあるとは言えない。

4 よって、裁判所は免訴の言い渡しをする必要はない。

 

設問後段

1 上記の基準により、①事件と②事件の単一性が認められるか検討する。

2 設問前段と異なり、①事件の訴因には、「被告人は、常習として、~」と常習傷害罪の構成要件である、「常習性」を窺わせる訴因が記載されている。そして、包括一罪に当たるか否かは事件の時間的場所的接着性、行為の態様から判断する。
 両事件は、いずれもH県I市内で行われた。そして、犯行の日付は令和元年5月15日と6月1日と、1か月以内に行われた犯行である。また、いずれも、甲が、相手の顔面等を殴り、障害を負わせるという点で、行為態様も共通している。以上から、両事件は包括一罪であると解せるので、単一性が認められる。
 なお、②事件は①事件の起訴、公判が行われる前に発生していたので、これを同一の罪としても、捜査機関にとって酷ではない。
 よって、両訴因は公訴事実の同一性の範囲内にあるので、裁判所は、判決で免訴の言い渡しをするべきである。

 

以上

 

  • 雑感

 今年の予備試験の一番の爆弾は刑訴なのではないか。本来、得点源の刑訴で、マイナー論点(?)の一事不再理効が出るとは思わなかった。でも、自分はこの論点は書けた。問題文で常習罪と書かれているのを見た瞬間、一事不再理効の論証を必死に思い出し、なんとか二重の危険→公訴事実の同一性の範囲内という流れを書いた。

ミスとしては、包括一罪のあてはめで、両事件の犯行場所をH県I市内としてしまったこと。(というか、この当てはめいるのか?あまり、書くことが無かったのでとりあえず、現場で思い付きで書いてみた)。あと、最後に付け足しで、②事件は①事件の公判前に行われたので、問題ないと、書いたが、ここは、一事不再理効の時的限界の論点だった。この論証は覚えていなかったのでしょうがないが、結論としては起訴できないので、少しは点をもらえると嬉しい。

出来としては、上出来。自分は前の方の席にいたので、試験委員が枚数確認をする際、他の受験生の答案の分量が見れたのだが、半分から3分の2は裏面は白紙だった。ということは、みんな書けていない。